第二幕 三ツ矢サイダー

「サイダー」という単語は、フランス語でリンゴ酒を意味する「シードレ」の英語読みに由来すると言われている。

 

日本の「サイダー」の嚆矢と言えば「三ツ矢サイダー」であろう。

 

今ではアサヒ飲料の1ブランドであるが、 あのマークや緑の瓶の記憶のある人は多いに違いない。

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英語版のWikipediaには

While branded as a "cider", the East Asian use of "cider" refers to a very different drink from that typically referred to in English: the basic flavor can be described as a cross between Sprite and Ginger Ale,

とある。

「サイダー」と銘打っていますが、東アジアの人のいう「 サイダー」は、ふつうの英語の「サイダー」とは全然違う意味で、 基本の味はスプライトとジンジャーエールの間くらい。

とか書いてある。

 

文字通りにサイダーがシードレでリンゴ酒であるならば、 それのソーダー割は、りんごチューハイであろう(違うか)。 飲んだことはないが。

 

アサヒ飲料のサイトには、「三ツ矢の歴史」というページがある。

1884年兵庫県多田村(タダムラ) 平野から湧き出た炭酸水をびんに詰め「平野水(ヒラノスイ)」 として製造。天然の鉱泉水だったそうだ。炭酸水を飲んだり、 ウィスキーのソーダ割する外国人のための製品として商品化されたらしい。最近はあまり言わないかもしれないが、いわゆる「クラブソーダ」つまり、 バーやクラブなどのお酒を提供するお店用の炭酸水である。

当時、高級品で、御料品として皇室に献上されていたらしい。

 

1909年 三ツ矢シャンペンサイダーとして発売されたが、 シャンペンと言っているが葡萄由来のワインではなく、 サイダーと言っているがリンゴ酒由来でもなく、 砂糖で甘みを付けた炭酸水であったようだ。 ホントに外国人を意識してたのか?

確か、 ミシンはソーイングマシンと言っているうちのマシンだけ聞いてミシンになったと聞いたことがあるが、大方、 サイダーをソーダで割ってみたいな話をしているうちのサイダーだけ聞き取ったのではなかろうか?

 

当時の瓶のデザインは緑色をしていたが、 シャンペンと名乗るくらいだから、 お酒の瓶を意識したのであろうか?

お酒の瓶に緑色なのがあるのは、日光の紫外線成分をカットして、 中のお酒が変質するのを防ぐ意味があると聞くが、果たして、 三ツ矢シャンペンサイダーにその必要があったのか?(メーカー見解では「遮光して変質を防ぐためだったと思われます」だったが、では、何故、途中から無色の瓶になったのか?暗所保存になったから?)

 

おそらく高級品として箔を付けるために、 日本酒の体裁を真似たのではないだろうか?詳細は不明である。

 

その後、大戦を経て、砂糖が貴重品になり、 まだまだ三ツ矢サイダーは高級品だったが、 高度成長期あたりから爆発的に売れたらしい。

 

さて…ざっと、三ツ矢サイダーの歴史をおさらいしてみたのだが…

今回の目的は、ソーダ色やソーダ味は誰が言い出したのか? である。

その観点からすると…

 

三ツ矢サイダーは、 確かに日本の炭酸入り清涼飲料水のはしりではあるが、 そのデビューの瞬間からソーダという単語を聞き漏らした疑いがあ り、さらに、 高級感のために緑色の瓶を使っていたという線が濃厚である。

 

だとすると、この嫌疑に関しては、シロと言うほかない。

なお、三ツ矢サイダーの商品ラインナップで、 三ツ矢ホワイトソーダというのがあるが、 あれは練乳を少し使ったカルピスソーダもどきであり、海外では" Mitsuya cider white"という名で出回っているらしい…