南蛮渡来のタルタルソース

 

本日のお品書きは「南蛮」である。

 

だからと言って、鴨南蛮やチキン南蛮や南蛮漬が出てくるわけではない。

いや、話題としては出てくる。食べ物として出てこないだけである。

 

ふつうに学校で歴史のお勉強をしている人なら、戦国時代とか江戸時代に渡来した西洋人のポルトガル人やオランダ人のことが南蛮人だろう。と言うに違いない。

 

元々「南蛮」という言葉は、中国の中華思想に基づいていて、4つの方面の周辺民族のことを野蛮な民族とし、「四夷=東夷 · 北狄 · 西戎 ·南蛮」と呼んだことに由来する。差し詰め、東南アジアの民族のことをそう呼んだのである。かの国では、現代でも周辺民族とのいさかいが絶えない。中華思想に基づくならば、日本だって「東夷」の一味ということになる。

 

現代だと、すぐに「欧米では」というくらい、昔の偉い人は中国かぶれだったに違いないので、関東より東北に住む人のことを蝦夷と呼んだりして、それを討伐するからと征夷大将軍なんて役職を作ったのだから、肝が小さい。


f:id:mucci:20190219155925j:image

ポルトガルやオランダの人は、ユーラシア大陸沿いに陸路で来たのでないので、船で南からやってきたことになっている。だから南蛮なのだとか…

 

その際、東南アジア由来の香辛料やネギなどと共に、エスニック系の料理が伝わり、それを南蛮と呼ぶようになったという説が有力である。

つまり、ネギやら唐辛子やらを使えば南蛮なのだ。

 

少なくとも、蕎麦屋の態度は明確である。ネギが入ってれば南蛮なのだ。たまに、鶏を使っているのに鴨南蛮と言い張るが、そこはお題目やお約束の好きな日本国民の特性であろう。それに、鶏南蛮と呼んだのでは、後述するチキン南蛮と紛らわしい。それに、名前から察するに、チキン南蛮は比較的新しい料理に違いないカタカナ語だし。


f:id:mucci:20190219155946j:image

南蛮漬はどうなのか。すごく和食な感じがするのだが…どうやら、やはり南蛮人がもたらした東南アジア由来の香草や香辛料を使うからということになっている。


f:id:mucci:20190219160013j:image

ということは、南蛮人が来るまで葱はなかったのか?他所様のサイトを参照すると『日本書紀』時代からあるらしい遣隋使だかが宝物を中国に献上して、帰りにネギを持って帰って来たのだろう。

 

ようやく、チキン南蛮である。どうもこれには、ネギは関与してないように思える。タルタルソースには玉葱のみじん切りは入っているが…



f:id:mucci:20190219163853j:image

Wikipediaによると

 

1.かつて宮崎県延岡市内にあった洋食店「ロンドン」で昭和30年代に出されていた賄い料理の一つに、衣を付けて揚げた鶏肉を甘酢にさっと浸した料理があった。この店で働いていた後藤直が、これを大衆食堂お食事の店「直ちゃん」にて売り出した。タルタルソースは使用しない。

2.現在の主流となっている、タルタルソースを掛けたチキン南蛮を考案したのは、同じくロンドンで働いていた甲斐義光とされる。宮崎市の「おぐら」2号店としてオープンした「洋食屋ロンドン」にて1965年(昭和40年)に販売された。

 

どうやら昭和に入って出来上がったようだ。揚げることと酢を使うあたりが南蛮漬の風味なのか?

 

私の中では、タルタルソースというのは、チキン南蛮よりも、マクドナルドのフィレオフィッシュである。子どもの頃は、チープなくせに西洋な感じがしたものだ。略し方には「フィレ」派と「フィレオ」派がいたが、関西なので、店の名前は「マクド」であった。その頃の、タルタルソースには刻んだゆで卵は入ってなかったように思う。


f:id:mucci:20190219160028j:image

「タルタル」というのは、ヨーロッパの人にとって、中世のユーラシア大陸を席捲していたモンゴルの遊牧民族のことを指していう言葉だったそうだ。古代ギリシアで奈落や地獄を指したタルタロスにちなんで恐れていたとか。真相は定かではないらしいが、中国人が四方の民族を野蛮呼ばわりするのと変わったものじゃない。

 

なお、私は、タルタルステーキもユッケも食べたことがない。