5歳の頃

5歳の頃、自宅の風呂に浸かりながら、栓を抜き、お湯がなくなっていくのを感じながら、やがて空になった湯船の中でしゃがみ込んで「ぼくが死んでしまっても、世界は続くのだ」と空恐ろしくなったのを憶えている

5歳の頃、保育園のお昼寝の時間、ジャングルジムのてっぺんに登り、断固お昼寝を拒否する一人デモを実施した

5歳の頃、保育園のお絵描きの時間に、色黒な父の顔を、茶色のクレヨンを使いまくって描いて先生に褒められた

5歳の頃、いや、もう少し前かもしれないが、母に連れられて、一緒に銭湯の女湯に入り、湯船の縁の段を踏み外して、深みにはまり、溺れそうになった。私は三島由紀夫のように産湯の盥の縁は憶えてないが、女湯の湯船の縁にはトラウマがある

5歳の頃、保育園のプール遊びで、女の子は、ちんちんの付いてない人種なのだなと認識した

5歳の頃、もう少し後かもしれないが、夢の中で、好きな女の子が悪の秘密結社に連れ去られて、助けに行ったのだけど、彼女は首だけになっていて、その生首が「間に合わなかったね」と呟いたのを憶えている