
鹿島田駅には、なぜか普通の券売機が一台しかない。特急券用がもう一台あるが近距離は買えない。みどりの窓口も営業時間が短い。まるで「紙の切符なんてもう絶滅危惧種ですよ」と言わんばかりの態度だ

コロナ禍でリモートワークが広がって以来、私の職場では週四日以上出社しないと定期代が支給されなくなった。つまり私は、絶滅危惧種の紙切符を買うしかない側の、稀有で奇特な人間なのだ
「Suicaを買えばいいじゃない」と言われるが、物理Suicaはデポジットで五百円取られるし、結局、チャージの頻度も増える。しかも私のスマホはNFC非搭載という、令和の日本に生きるガラパゴス仕様だ。「ピッ!」と鳴かない種類のやつだ。モバイルSuicaは夢のまた夢。結果、私は毎回、券売機一台の前で行列に並ぶ羽目になる
余談であるが、NFCというのは、以前はFeliCaと呼ばれていtた規格の上位互換である。Near Field Communicationという無線通信規格である。Bluetoothなんかより全然飛距離が短い。だからこそ「タッチ」しないといけないし、遠くに飛んだら、他人の定期券でただ乗りできてしまう。なお、KFCは通信規格ではなく、フライドチキン屋である。みんなKFCとかケンタと言うので忘れてしまったかもしれないが、Kentucky Fried Chickenの略である。閑話休題

「じゃあ、新川崎駅を使えば?」という提案もある。しかし、新川崎駅は川崎駅に接続していない。映画好きの私にとって、仕事帰りに川崎駅へ寄れないのは致命的だ。109シネマズ、TOHOシネマズ、チネチッタという三つ巴の映画館が待っているのに、何故に私が新川崎駅を使うことは有り得ようか。真っ直ぐ帰宅するにしても、武蔵小杉駅で南武線に乗り換えるとなると、あの「同じ駅とは思えない長さの連絡通路」を歩くことになる。あれは最早、隣の駅だと言っても過言ではない。修行か何かだ

更に、鹿島田駅のラッシュアワーは、もはやお祭り騒ぎである。上下線がほぼ同時に到着し、オフィスビルもあるが、タワマンもある鹿島田には、帰途を急ぐ人々が一斉に押し寄せる。数少ない改札機のうち、紙切符が使える改札にも、降りてきたSuica持ちの人々が殺到し、こちらは入場すらできない。紙切符ユーザーは、まるで川の流れに逆らうサケのような存在だ。プラットフォームに辿り着くだけでヘトヘトの瀕死の重体だ
私は知恵を絞り、消極的施策を打った。おやつや晩飯の買い出しのついでに、帰りの切符を買っておくのである。通常の回数券は数年前に販売停止し、物理Suicaはレアアース問題でいつ再び姿を消すかわからない。紙切符を事前に買うという、昭和のような生活スタイルに戻るとは思わなかった
それにしても、JR東日本はどうしてこうも「Suicaこそ最強の経済インフラ」と信じて疑わないのだろう。オリンピックの時でさえ、謎のインバウンド向けSuicaを発行した。JR提携でないクレカは、近距離切符の購入には、ほとんど使えないという頑なさを貫いた。誰かそろそろ、JRに「時代はキャッシュレスですよ」と優しく教えてあげてほしい。あ…Suicaもキャッシュレスの一種か

















