問題はクリームソーダである。
例のあの毒々しい青緑の液体にバニラアイスを浮かべたアレである 。
幼い頃、父の配達の得意先の喫茶店に付いて行って、 そこのママさんに「お手伝いえらいねぇ」 と褒められて飲み物をもらうことがあったが、 私はクリームソーダよりミックスジュース派であった。
そもそも、私は心理的にか体質的にかメロンが苦手である。 昔から「私が入院しても、お見舞いにメロンはご遠慮する」 と言ってあるし、「生ハムメロンなんて何が嬉しいのか? 皆目わからない」と公言して憚らない(私は生ハムも、 あまり好きではない)。但し、アレルギーというほどのものではない。少し口の中の天井が痒くなるくらいだ。
本物でさえそうなので、フェイクでも、 メロンパンなんか何がメロンなんだ?と思うし、 メロンの匂いのする消しゴムなんか集めて何が嬉しいのだ? と思っていた( メロンに限らず匂い付き消しゴムは好きではなかった)。
どっちが先かは分からないが、あれは、かき氷にかける人工の香料と着色料と甘味料で出来たシロップを炭酸水で薄めたものではないか。なにがメロンだ。と思っていた。
あまりに派手派手しい色合いなので、すは、 アメリカ発祥だろうと思いきや、 件のクリームソーダは日本発祥だと聞く。
海外で「クリームソーダ」というと、 ルートビアやコーラのような炭酸飲料にバニラエッセンスなどで香りをつけたもので、 敢えてそこにアイスクリームを乗せるのはフロートと呼ぶ。
例のクリームソーダは、日本初のソーダファウンテンとしてオープンした、現在の資生堂パーラー銀座本店が発祥というのである。
現在でも、季節の果物に合わせた特製のクリームソーダがメニューに載るが一 杯千円以上する。
実際、どれほど果汁が含まれているか謎だが、フルーツ由来のシロップと炭酸水のノンアルコールカクテルと言えるかもしれない。
資生堂パーラーの歴史はお店の創業は1902年とある。 アメリカのドラッグストアを模して設備などを輸入して始めたそう だ。
炭酸水製造機などもアメリカからの輸入品だったようだ。ということはあのシロップもか? レモンスカッシュのようなノリか?( 関西の喫茶店ではお客のおっちゃんは「レスカ」と言ってましたな)
シロップには色々バリエーションがあるだろう(実際、本家の資生堂パーラーのメニューは季節によって変わったりする)が、 日本全国的にクリームソーダと言えば緑のメロンソーダというのがデフォルトであろう。
資生堂さんは本格派だったとして、どうしてもあの緑で思い起こすのは、昔で云う「ジュースの素」「 粉ジュース」今なら「粉末清涼飲料」である。
現在はJASのお達しで果汁100%でないと「ジュース」を名乗ってはいけないし、 アラフォー未満の人なら、スポーツドリンクの粉くらいしか知らないのではないか?
果物が高級品で、そのジュースと言えば超高級だった時代の憧れだったのかもしれな い。そういえば、昔はわざわざ「生ジュース」と言っていた。" Fresh juice"の訳なのか?生モノ感で言ったのか?今でも「 生絞り」を名乗る商品はある。
重曹というか酸味料が入っていて、水に溶いたり、直に舐めるとシュワシュワする。 あれこそがソーダの原風景なのではないか… という気もしないではない。
今回の捜査の結果としては
・日本風のクリームソーダの発祥は、 資生堂パーラー銀座本店である。
・資生堂パーラーはメロンに限定せず、 いろんな果物バージョンを出している。
・ ソーダ味というのは炭酸のシュワシュワと果物ぽい酸味だと思われる。
・あの色はシロップや粉ジュースによる記憶の刷り込みである。
全国的にクリームソーダのデフォルトがメロンソーダになった理由は定かではない(なお、メロンソーダは日本発祥らしい)。 メロン高級信仰の影響だろうか?
明治大正の時代に新橋界隈の花柳界のおねえさんたちが好んだという青緑色「新橋色」に由来するという説もある。実際に、そのコラボ商品を資生堂パーラーが出していたようであるが、 これは地元コラボと思われ、ソーダ色の由来というには、 弱い気がする。
おねえさん受けが良いというが、なんとなくティファニーブルーに近い。